• 9月25日

    今日はパキスタン北部の隊商で栄えた古い町ペシャワールへ行くのだけど、タクシーいくらかなぁ・・・

    拾ったタクシーの運転手はファラハート、なんと彼は兄弟がペシャワールに住んでいるというアフガニスタン人で往復2000ルピー(4000円)で商談成立。よっぽど車を愛してるんだなぁ・・・って感じのディスプレイ満載のファラハート号でペシャワールへ向けて時速90Kmで飛ばす。

    ペシャワールまで3時間かかるので途中に、忽然と現れた川の青色がきれいに見える場所にあるドライヴイン(っていうんだよな、きっとこれも)でお茶タイム。イスラム的に装飾されたトラックの並ぶ野郎のための峠の茶屋って感じかなぁ・・・ひげ面のパキスタン人たちの視線がやっぱり川内さんに集中。イスラム国じゃ女の人が体にフィットするズボンはいてるってだけで珍しいの極地なんだよね、んで、川内さん必然的に人気者なり。そしてお茶の後、さらにファラハート号は進む。

    道の脇にでんぐり返ったイスラム的デコトラ発見!運転手「あ~、人生終わったなぁ~」というかんじで傍にアグラかいて座り込んでいるけど・・・死ななかっただけいいじゃん!

    そしてファラハート号はさらに進み、でんぐり返ったデコトラ2台目発見!して、この国には積載量の制限がないのだろうと確信(事実は不明)だって、どのデコトラも日本じゃ考えられない高さに荷物を満載してるんだもんな。

    快調に飛ばすファラハート号を追ってくるサイレンは・・・あちゃ~警察みたい・・・つうか警察。しかたなく道路脇に停車。ファラハートがポリ車に連れていかれ、スピード違反かと思いつつ待ってたら、ポリの矛先はなんと今度は日本人3人組に!
    パスポートを出せって言われても、アフガンへのビザ申請中でイスラマバードの大使館に提出して持ってないもんね~と言うしかなく、日本人を語るスパイかインド側のテロリストかと思われても仕方がないんだぞ~と引き立てられ警察署に連行される・・・ううう・・・。

    署長室で取り調べが始まり、とりあえずアフガン入りのビザ取得の代行をたのんだ旅行社の事務所の電話番号を渡すが、なんか調べるというよりも外人つかまえての24才署長の自慢話語りモード。竹井さんの「わしはアメリカ嫌いや」に共感したもようで、お茶は出てくるし川内さんと僕に結婚の大切さを語り、男は強くあらねばならないと語り、その間に鳴った彼の携帯の着メロが・・・懐かしのランバーダ・・・。最後は「飯でも食っていかないか」となったけど、それこそ臭い飯でしゃれになんないよ~。

    警察署から出て、律儀に待っていたファラハート号に乗り込みペシャワールまであと少しの道のりを飛ばし、だんだんと街道沿いに店が並びだし、目の前に14世紀(たぶん)に出来たと言う巨大な要塞が現れて町の中心にきたようだ。病院前の雑多な物売りや店が並ぶ広場に車を止めてバザールめざして歩く。どうやらファラハートは兄弟の住む近くに車を止めたもようで、ペシャワール1の巨大病院のこれまた巨大な中庭をかなり歩くことになったけど、建物の外にまであふれる病人の数がすごい。

    さて、まずはバザール入り口近くのモスクを訪れるが、やっぱりルールがわからないのですごすご退散・・・途中で道を聞いたら連れて来てくれたおじさんはもう床に伏して祈りだしてるし・・・でも律儀に祈ってる人ばかりじゃなくて昼寝してたり、おしゃべりしてる連中もいたりする。
    バザールは3つの路地がメインで、それぞれ靴やバッグ中心の皮製品小路、野菜小路、布や雑貨小路となっているが、ラワルピンディに比べると少し小規模な印象を受ける。しかし、この町から国境までがトライバルエリアになっているために自動小銃を持った治安維持部員が他の都市よりも確実に多くアフガン難民も多い。歩いてる途中からたくさんのガキが付きまとってくるが、その中のやけにクールなガキ、アブドロヒッドが他のガキを押しのけ道案内してくれる。こういうガキは妙に観光客に媚びて、知ってる店とかに連れて行きその店からこずかいを貰ったりするんだけど、彼は彼の進めるコースや店を断ってこっちが勝手に「あの店でケバブ食うべや」と言っても「OK、じゃそうしよう」と言い放つのがいい。他のガキとはちょっと違う・・・クールで人間的なプライドをちゃんと持っている。ケバブ屋に入っても、僕らの分を注文するだけで自分は何も食おうとしないので「食え食え」と進める。聞くと彼もアフガン出身で親が骨董屋をやってるというので僕らは、あえてそれを口に出さなかった彼の男気に心打たれ彼の親父の店に行くことにした。

    彼の親父の店はモスク前のキャラバンサライ(昔の隊商宿)だった古い建物の中庭にあり、中庭から見上げる2階はぐるりと宿部屋の雰囲気を残している。アブドロヒッドはやはり、買え買えなどとは言わず(彼の親父は言いまくってたが)やはりクール。竹井さんが「日本に来たらいつでも来い」と名刺を渡し、僕らはまた巨大病院の巨大中庭を通ってファラハート号に向かう。もしよかったら少し金をと言うアブドロヒッドにアリガトウと50ルピー渡すが、彼は僕らを見送るべくずっと付いて来る。もう戻っていいんだよと言っても最後まで見送るつもりかずっと付いて来る。寄って来る物乞いを追い払いながら、まだ俺の任務は終わってないと付いて来る。そして、ファラハート号の前で涙の別れ。

    しかし約束の時間を過ぎても運転手ファラハートがあらわれないので、ひとり茶店でチャイを飲む・・・熱い・・・案の定みんなが寄ってきて「どっから来た!?チャイは美味いか!?」の嵐・・・竹井さんたちは売店でコーラを買って飲んでおり、熱い熱いチャイはなかなか冷めず、おまけに猫舌の僕はいちいち彼らの質問に答えなきゃいけなくなるのだけど、おんなじ質問を何回もすんな!つうの!でも楽しい雰囲気だけどね。

    竹井さんたちがファラハートがきたよ~と言いにきて、たった2ルピー(4円)のお茶代を払って腰をあげると同時に女の子3人がやってきて「アフガンから来た、お金めぐんでください」と囲まれる・・・非情かもしれないが、僕にはそういう個人にあげるお金はないのだ。なにか彼女らが出来ること、それで少しでも収入が得られることが可能になることを望み、そういう環境作りに手を貸したいと思うのみだ。年長の子の眼はシリアスだけど、小さい2人は鬼ごっこでもするように笑って付いて来る。こっちにやって来て初めての積極的な物乞いだ。こういう状況がカブールにはあふれてるのだろうか・・・

    久々に兄弟に会ったのか待ち合わせに1時間も遅れたファラハートに聞くとペシャワールには5万人の難民が暮らすブロックがあるそうだけどタリバン政権崩壊後は2万人以上が祖国に帰ったという。ほとんどは20年にも及ぶ内戦からの避難民で、パキスタンで職を見つけたりした人も多いそうだが、そういうチャンスに恵まれなかった人たちは依然としてキャンプ(というよりは土壁の家が限りなく連なる町になっている)に暮らしている。そして子供たちは大きな袋を小さな背にかついで、その日の薪になる木切れや紙を探し路上を歩いているのだ。

    ファラハート号に乗り込み、一路イスラマバードへ戻る。あ~また3時間・・・途中から日が沈み、街道はデコトラが日本の国道並みに連なって走っている。ぼろっちい店ばっかりだけどこの国は品物は充分に足りているのだ。車中、そういえばパキスタンの国技はホッケーだけど、アフガニスタンの国技は何だと聞くと、ファラハートは笑いながら答えた「バンバン!」・・・戦争か・・・

    大きくなったらパイロットになりたいと、その時は10才の子供にもどったカンダハル出身のアブドロヒッド。彼がいつの日かよれた名刺を持って竹井さんを訪ねられる日が来ることを!