• 4月2日

    絵を描くというのは、とても簡単なことだ。
    でも、満足できる絵を描きあげるのは難しい。
    呼吸して生きていることも、今は簡単だ。
    でも、喜怒哀楽を一直線に感じて生きるのは、難しい。

    時間は僕が生まれる前から同じ速度でずっと流れている。
    その速度に時々追いつけなくなる。
    またしても、蛍光灯に眼をつぶされそうになる。
    白い壁が僕を圧迫する。
    無気力、無感動の瞬間に次ぐ瞬間。
    想い出を霧の中に隠してしまう。

    ちょっとした先の未来が見える事は、けっして楽しいことじゃない。
    あの時流した涙は、とっくに蒸発してしまったのか?
    自分自身、からからに乾いてしまったのか?
    この皮を切り裂けば、新鮮な肉があるのか?

    時々、大きな欠伸をして、明日のことを考える。
    眠くなってきて、今日は眠ってしまおうかと思う。

    12年前、この身ひとつでこの国にやってきた。
    生徒たちに名古屋駅、新幹線のホームで見送られ。
    バイトで稼いだ全財産とカセットテープと共に。
    自転車を買い、行き先もなく孤独に街を走り回った。
    小さな紙切れに思いを描きまくった。
    誰に見せるんでもないのに。

    まぶたを閉じれば、ホームで小さくなっていく彼等がまだ見える。
    今こそはっきりと眼を開き、再びあの気持ちでもって、今を見つめよう。
    得体の知れないプレッシャーに負けてたまるか。
    のほほんと知ったかぶりして語る日和者にはならんぜ。
    そんなのはクソ爺になってからでいい。

    負けない。自分に負けない。
    あきらめずにキャンバスに向かえ。

    壁に貼ったあの紙を、目の前に貼りなおせ。

    NEVER FORGET YOUR BEGINNER’S SPIRIT !

    年寄り面して、ごろごろしてると腐っちまう。
    時差ボケ面して、自分から逃げてちゃ腐っちまう。
    腐るのは死んでからで充分だ。

    人に感謝せよ。しかし頼るな。
    やる気は自分の中から生まれなければ続かない、意味がない。