• Interview for SMODA (Spain)

    Q-1. アーティストになろうと決めたのはいつですか?その決意や美術に関わる最初の記憶は何ですか?

    A. 子供の頃から絵は楽に描けて、上手いと褒められてはいたけれど、もっと上手い子がいたりもしたし、とりたてて絵が好きだったわけでもなく、ペットの猫や近所にいた羊などと遊んだり、本を読んだりするほうが好きだった。特別アーティストになりたい、なろう、と思ったことは無く、いつの間にか周りから「アーティスト」と呼ばれるようになっていた。

    Q-2. 奈良さんの子供時代はアメリカの文化に満ち溢れていましたね 。その頃一番好きだったアーティスト・歌手・ポップカルチャーの人達を教えてください。

    A. 小さい頃はコニー・フランシスやビートルズ、ストーンズが好きで、10代でニール・ヤングが大好きになり、今もずっと好きでいる。

    Q-3. 弘前ではひとりぼっちな子供だったそうですが、この孤独感は作品にどの様な影響を与えましたか?

    A. 自身の内なる声を聴く力を育んでくれた。

    Q-4. 制作する時は一人でないと無理ですか?

    A. 無理です。

    Q-5. 2000年にドイツから帰国しましたね。なぜですか?自分のルーツに戻りたかったからですか?

    A. ずっと使っていたスタジオが入っている建物が壊されることになり、新しいスタジオを探すのが面倒臭かったのと、次の年に日本で初めての美術館個展が決まっていたので、日本に戻って制作する方が楽だと思った。

    Q-6. 1991年に《The Girl with the Knife in Her Hand》を描きましたね。率直な女の子と白い武器を組み合わせた理由を憶えていますか?

    A. いろいろなことが複雑に折り重なっていて言葉には出来ないが、絵自体は自然に生まれた。

    Q-7. 幼い女の子の絵をたくさん描かれていますが、旅の写真も女の子が中心のようですね。女の子はなぜ作品の中で重要な存在なのですか?

    A. 自分の中にある女の子ような感覚がそうさせている気がする。

    Q-8. 意図的にそう描いていないかもしれませんが、奈良さんの作品はフェミニストと考えられるでしょうか?吸血鬼の女の子やナイフの女の子など、自分の身は自分で守れる様な、決して無力ではない女の子を描いているようですが。

    A. わからないけれど、心理学的に見たらそうなのかもしれない。

    Q-9. 奈良さんの現在の作品は若い頃のものに比べて、もっと政治的になっていると思いますか?何故でしょう?

    A. 10代あたりから反体制、反権力側にいると思います。自分の生み出すものには、政治的=社会的な側面もあり、また自分という個に帰していく側面もあり、そのふたつで成り立っている気がします。

    Q-10. 東日本大震災の時に制作を中止されましたが、芸術とそのパワーへの信用をどの様に取り戻したのでしょうか?

    A. 毎日制作に明け暮れていた90年代のようには、未だに制作はできません。アートと呼ばれるものに対して、それを取り囲む経済的なものへの諦め、脱力は歳をとるごとに大きくなっていきます。そして、自分が追い求めているものは芸術というものとは別の「自由でいること」という考えなのだと思えています。

    Q-11. 自分の絵画が反原発デモの象徴として使用されているのを見る時、どういう気持ちですか?

    A. 自分は80年代から反原子力という考えだったのですが、別に何も思いませんでした(いいんじゃないか、という感じ)

    Q-12. 戦争や原爆の無い世界は可能だと思いますか?

    A. 現実的には無理だと思いますが、みんながそう信じて行動していくことが大切だと思います。

    Q-13. Phaidonの本に最近ヨルダンの難民キャンプに旅したと書いてあります。今のグローバル化した世界の中で、まだ難民になってしまう人がいることは理に適ったことでしょうか?

    A. いいえ。

    Q-14. アーティストが自分の生きている時代の課題(例えば、難民問題や環境問題など)に関心を持つことは大切だと思いますか?

    A. アーティストではなく、みな人として関心を持つべきだと思います。アーチストも人ですから。

    Q-15. 紙を再利用したドローイングが多いですね。これは美術をもっとエコにしよう、というステートメントですか?

    A. いえ、子供の頃から要らない紙に描いていた名残りです。

    Q-16. マテスやスペイン彫刻家のエドゥアルド・チリーダみたいに、奈良さんは田舎に住んでいまして、自然に対するご自分の理想をN's Yardで表現していますね。なぜこの様な生活を選んだのですか?

    A. 東京のような大きな町は好きじゃないからです。今はもっと田舎に住みたいと思っています。画家やアーティストとカテゴライズされて見られる、あるいはアーティストとして生きるより、小さなコミュニティにいてそのコミュニティの一員として地域のみんなと生きるのが自分の理想なんだと最近気づき始めました。

    Q-17. 信楽で創っている陶芸、そして江戸時代にインスパイアされた絵画などは日本の伝統文化に繋がっていますね。 伝統の法則を破り自分の表現法を作り出すには、まずその伝統を知ることが必要だと思いますか?

    A. そんなことはないと思う。伝統に限らず、興味が生まれた時に知ろうとすることが大事だと思う。

    Q-18. なぜ写真を撮ることにしたのですか? 絵画と全く異なりますね。

    A. 写真は子供の頃から撮っています。音楽を聴くようなものです。10代の始めの頃から写真を撮ることを意識して自発的に撮ってきましたが、意識的に絵を描くようになったのは20歳を過ぎてからです。

    Q-19. 将来は世界のどの様な所を発見してカメラに収めたいと思っていますか?

    A. 何も考えていませんが、世界は自分の足元に広がっていると思っています。ジャングルに行ったり、高い山の上に昇ったりすることは無いと思います。

    Q-20. 多くのシングルやレコードのジャケットデザインをしていますね。好きなバンドをいくつか教えてください。奈良さんの世界観や作品に一番影響を与えたレコードは何ですか?

    A. 好きなミュージシャンはたくさんいるので、いくつか選ぶのは難しいです。今週一番聴いていたのはJosephine FosterのI'm a Dreamerでした。後はThe Magnetic Fields、Cosione for the Painfully Alone、Aaron Ross、Beautiful Dudesとか聴いてました。Neil Youngは自分の中で永遠です。

    Q-21. 自分はジャパニーズ・ポップやスーパーフラットなどの芸術運動の一部と考えていますか?

    A. 思っていないです。90年代はずっとドイツにいたし。自分を作っているレイヤーはスーパーフラットと呼ばれるアーチストとはダブらないものばかりだと思います。

    Q-22. 村上隆氏はルイ・ヴィトンなどのファッションブランドとのコラボをしています。奈良さんのファッションに対しての考えは?ファッションブランドとのコラボに興味ありますか?

    A. 商業的、あるいは広告的な仕事にまったく興味が無いとは言いませんが、そのようなことで自分や仲間たちとの楽しい時間が無くなったりするのは嫌ですし、そもそもファッションや普通の人でいられなくなるようなセレブな交流は好きではないことに気付きました。