• 2月28日

    のほほんと平和に暮していると、なにも見えなくなってしまう。
    エロやゲロや悪徳、暴力がそんな平和ぼけの眼を開かせる時がある。
    いっぱしのインテリを気取り良識ぶっても、所詮人は食っては排泄する動物だ。
    意志も持たず、きれいごとにどっぷりと浸かってるやつらにミチロウは吠えるのだ。
    臓物を会場にばら撒くのだ。全てぶちまけるんだ。
    彼が「死にたいか!」と叫ぶ時、それは本能を感じる時だ。
    きれいに創られたものは破壊され混沌に引き戻される。
    そして、ゲロまみれの混沌に一筋の光が降り注ぐのだ。
    その光の清さに、美しく彼は輝いていた。
    嘘ばっかりで固められた服を身にまとい、人間はその足跡を残す。
    しかし本当に美しいものは、愚かさや汚さの中にいるという自覚から生まれるのかもしれない。

    アンコールのステージにはいろんなミュージシャンが立っていた。
    KENZI、オーケン、パンタ!、ナカノシゲル、ナオキ、ヨースコー・・・・・
    感動以外のなにものでもない「仰げば尊し」が終わり、ケイゴがドラムを金属バットで叩き壊した。
    ステージの明かりが落とされたが、コールは止まなかった。

    壊れたドラムセット、偽札が散らばったステージに一人アコースティックギターを手にしたミチロウがいた。
    「これが今の本当の自分です」
    そう言って「天国の扉」を歌い出す。
    その歌には僕がスターリンを観て、聴いて、感じていたことの全てがあった。
    彼は最高のバンド演奏が終わった後にも、更に一人でギターを弾き歌う生の自分を見せた。
    さっきまで拳を振り上げダイブして踊り狂ってた連中が皆、静かに聴き入っていた。
    その叫びはアンプを通した爆音よりも大きかった。

    控え室に戻ったケイゴに「すごく良かった」とだけ言って、すぐに帰ることにした。
    外でまさに感動状態の東谷に会った。良い顔をしていた。

    この感動を、あの歌を絵にしようなんて思わない。それはくだらないことだ。
    あの歌は遠藤ミチロウの生き様なのだ。
    生き様を借りるわけにはいかない。
    この感動を、あの歌を胸に自分のやるべきことに向かえばいいのだ。

    俺はまだ死にたくなんかない。