告別式には行けそうにないけど、花を送ろう。
Graf-Recke Str. の学生寮に君が遊びに来た時のことを思い出している。
僕の部屋には鍵がかかっていて、一人ぽつんと食堂の椅子にすわり、僕の帰りを待っていた君。
ハンがインスタントラーメンを作ってあげたんだっけ。
2人でアムステルダムにも行ったっけ。
ぼろぼろの安ホテルに泊まって、不真面目な言葉で照れを隠しながら真剣に語ったね。
「ぼくたちは人間失格だから」と、笑いながら君は言った。
君を元気づけることで、僕もがんばれた。
ケルンにもひょっこりと君はやってきた。
写真箱を今ごそごそ探したら、タバコを吸う君の写真がでてきたよ。
ロンドン。
消防署跡の赤レンガの建物に君は住んでいた。
とってものろいエレベーターで最上階まで。
君の部屋は日当たりがよかったね。
屋上から屋根の上をつたって、街の風をうけとめた。
一緒にテレタビー人形を探しまくったりもした。
ロンドンでの僕の最初の個展。
君はやっぱりやってきて展示を手伝ってくれた。
てんてん亭で食った日本食!美味かったよな!
新しい作品のアイディアを君は語り、僕にアドバイスを求めた。
ひと袋の牛丼の具をあっためて2人でわけて食った。
君が作品を作り続けることを、はじめ予想しなかった人は多いと思う。
君自身が一番びっくりしていたのかもしれない。
それは僕がこうして作品を作り続けていることに似ている。
回りにはもっと期待される人達がいたもんね。
でも作り続けた君に、人間失格と笑った君に僕は自分を見るようで嬉しかった。
君が病気になって帰国してから、いつかこの日がやって来ることを覚悟はしていたけど。
受話器からささやかれる君の声に、可能性を信じていたりもしたけど。
君の声はもう生では聴けなくなってしまった。
あのアムスの安ホテルで。
「人間失格者は、死んだら絶対地獄行き」と僕等は笑った。
果たして天国や地獄があの世に存在するのかどうかなんてもうどうでもいい。